アムハラ語の子音は解釈にもよりますが、おおむね30個ほどあります。ここでは27種類とし、種類に分けてみていきます。
言語学の下地のある方のための音素目録PDFもご参照ください。

日本人にとっては比較的発音しやすいもの

/p/

パ行の子音を大体同じです。ただしこの音は比較的新しい外来語にしか現れません。

/b/

バ行の子音と大体同じです。

/m/

マ行の子音と大体同じです。

/t/

タ行の「タ、テ、ト」の子音と大体同じです。/ti/は「ティ」(「チ」ではない)、/tu/は「トゥ」(「ツ」ではない)のような音になります。

/d/

ダ行の「ダ、デ、ド」の子音と大体同じです。/di/は「ディ」、/du/は「ドゥ」のような音になります。

/s/

サ行の「サ、ス、セ、ソ」の子音と大体同じです。/si/は「スィ」のような音になります。

/n/

ナ行の「ナ、ヌ、ネ、ノ」の子音と大体同じです。

/ň/

「ニャ、ニェ、ニョ」の子音と大体同じです。

/č/

チャ行の子音と大体同じです。

/j/

ジャ行の子音と大体同じです。

/š/

シャ行の子音と大体同じです。

/y/

ヤ行の子音と大体同じです。

/k/

カ行の「カ、ク、コ」の子音と大体同じです。

/g/

単語の頭にくるガ行「ガ、グ、ゴ」の子音と大体同じです。細かいことを言うと日本語では母音に挟まれた場合少し音が変わる傾向がありますが、十分通じます。※軟口蓋有声破裂音

/w/

ワ行の子音と大体同じです。

/h/

ハ行の「ハ、ヘ、ホ」の子音と大体同じです。

少し注意を要するもの

/f/

英語のfの子音と大体同じです。上の歯で下唇を軽く噛みます。大げさに嚙みすぎなくても大丈夫です。

/v/

英語のvの子音と大体同じです。fに声帯の振動を加えます。/b/を混同しないようにしたいです。ただしこの音は新しい外来語のみに現れます。

/l/

英語のlの音に近いです。舌先を上の歯茎にしっかりとつけ、舌の両端から声帯振動を伴った声を通します。/r/と混同しないように気を付けましょう。

/r/

日本語で「あら?」と言った時の「ラ」の子音に近いです。英語のように舌を丸めるのではなく、舌先を上の歯茎の後ろ側に1回ポンっとあてます。/l/と混同しないように気を付けましょう。また、重子音/rr/になったときは舌先を数回震わせて発音します。スペイン語やイタリア語のrr、日本語では江戸ことばのいわゆる「べらんめぇ調」で見られる子音です。

/z/

ザ行の「ザ、ズ、ゼ、ゾ」の子音で通じます。厳密にいうと発音する前に、舌先が上の歯茎に触れないようにします。「あざ(痣)」と言った時の「ザ」の音はこれに近くなります。※有声歯茎摩擦音といいます。

/ž/

ジャ行の音で十分通じますが、厳密にいうと発音する前に舌先が歯茎の奥に触れないようにします。「ハジャ(破邪)」と言った時の「ジャ」の音はこれに近くなります。

放出音

放出音とは聞きなれない言葉かと思います。上に挙げた子音は息の流れを作るのが肺だったのですが、この放出音は肺からの呼気を使わず、喉をグッと持ち上げることによって作られる子音です。多くの人が知っている欧米の諸言語や東アジアの言語には見られない子音ですので、少し練習が必要だと思います。練習方法を以下に示します。

1.人のいない部屋や野中の一軒家を探しましょう。

2.自分が出すことのできる一番低い音を出してみましょう。

3.今度は自分が出すことのできる一番高い音を出してみましょう。裏声になっても構いません。

4.喉仏に手を当てて、低い音⇔高い音を交互に、数回繰り返してみましょう。その時に喉仏が上下に動いていることを確認しましょう。

5.今度は声を出さずに、低い音と高い音を出すようにしてみましょう。交互に数回やってみて喉仏が動いているか確認してください。

6.最後に、喉仏だけを動かせるように練習してみましょう。出来なければはじめのステップから繰り返します。これで「喉を持ち上げる」という動作がマスター出来ました。

では、この「喉を持ち上げる」動作を使った放出音を見ていきます。

/p’/

両唇を閉じ、喉を持ち上げます。口の中に圧力を感じると思います。直後に両唇を開放します。すると「ポンっ」という音がします。これが/p’/の音です。この音は古い外来語、特にギリシア語からの語に現れます。「エチオピア」の「ピ」はこの放出音です。

/t’/

/t/を発音する要領で、喉を持ち上げる動作を加えます。

/s’/

日本語の「ツァ」を発音する時の口の構えをし、喉を持ち上げる動作を加えます。「鋭いツァ」のように聞こえます。

/č’/

/č/を発音する時の口の構えをし、喉を持ち上げる動作を加えます。

/q/

/k/を発音する時の口の構えをし、喉を持ち上げる動作を加えます。うまくいくと「パキンっ」という鋭い音が出来ます。

以上がアムハラ語の子音です。中には難しいものもあるかもしれません。しかし、エチオピア人も日本人も同じ人間です。口の構造の違いなどはありません。練習すればきっとできるようになりますから、しっかりと練習しましょう。後日音声ファイルもアップロードする予定ですので、お待ちください。