言語の系統と話者数
アムハラ語は東アフリカにある「エチオピア」という国で話されている、アフロ・アジア語族セム語派に属する言語です。話者の数は正確な統計が出ていないので分かりませんが、母語話者だけでも2000万人はいるものと推測されます。また母語としてではなくとも、第2、第3言語として使用している人も多くいます。通用地域はほぼエチオピア国内に限定されるものの、日常的に使っている人の数は非常に多いことが推測されます。
エチオピアの「公用語」!?
さて、アムハラ語は「エチオピアの公用語」とされることが多いですが、どうでしょうか。実は現行のエチオピアの憲法には「公用語はアムハラ語です」という規定はありません。その代わりアムハラ語は連邦政府の「作業語」として位置づけられています。「作業語」とは
原文:የስራ ቋንቋ(yä-səra qwanqwa、直訳すれば「仕事の言葉」)
英語:working language
のことです。
では「作業語」が公用語にあたるのではないか、という疑問が湧きます。この辺りは「公用語」をどのように解釈するかが問題となりますが、1955年の改正欽定憲法では
原文:መደበኛ ቋንቋ (mädäbäňňa qwanqwa、直訳すれば「標準的な言語」)
英語:official language
という記述がありました。このことからすると、やはり現行憲法のyä-səra qwanqwaを「公用語」とするのは少々無理があります。
というわけで、アムハラ語はエチオピア連邦政府の「作業語」であり、狭い意味での「公用語」ではありません。
ちなみに、公用語がない国なんてあるのか、と思うかもしれませんが、日本も「公用語」はありません。日本は基本的に日本語のみが使われているのであえて公用語を定める必要がないのでしょうね。ただし、裁判所法第74条にて「裁判所では、日本語を用いる。」と定めているので、日本語は日本における「事実上の公用語」と考えるべきです。