አ 行の文字
この行は母音を表すものと考えてください。(※音韻論的に厳密には声門破裂音の子音音素を立てることが望ましいとも思われますが、ここではややこしい議論は避け、そのような解釈はとらないことにします。)/ä/の音は基本的に単独で出てくることはなく、/a/となります。ですから第1列の文字は/a/を表します。第4列の ኣ も/a/を表しますが、あまり用いられません。/a/を表したい場合、普通は第1列の አ を用います。
またこの文字に改変を加えた ኧ という文字があります。この文字は例外的に/ä/の音を表します。間投詞にのみ現れるもので、普段書くことはめったにないでしょう。
ከ 行の文字
この行は特に問題はないでしょう。手書きの時は第6列の ክ が、አ 行の第6列 እ に似てしまわないように注意しましょう。
ኸ 行の文字
さて、この行は例外です。ከ の文字の上に横棒を加えたものですが、アムハラ語では/h/を表します。そして、通常hの文字の第1列は/ha/を表すのでしたが、この行だけは例外的に/hä/を表します。この音の並びは基本的にはないのですが、動詞の活用に絡んで出てくることがあります。詳しくは文法を学習したときに説明します。なお、すべて/h/の子音を表しますが、アムハラ語では第1列以外はほとんど使われません。(北部のティグリーニャ語では頻用ですが。)
ወ 行の文字
まず第4列と第7列を間違えないようにしてください。第7列は左側にキュッと曲げるイメージです。さて、第2列 ዉ と、第6列 ው は字も表す音も違うのですが、実際のところ同じように聞こえてしまい、ネイティブにとってもそれは同じようです。したがって、文法的には第6列の ው で書くべきところを第2列の ዉ で書かれていることがよくあります。いくら言語学者が声高に「間違いだ」と主張したところで、実際に使用するのはネイティブなのですから、書き方のバリエーションあるいは変化ととらえるしかないでしょう。
ዐ 行の文字
これはአ 行と同じく子音なしの文字と考えてよいでしょう。አとの使い分けに関してはどちらを使ってもよいのですが、比較的 አの方が用いられることが多いように感じます。この文字はもともとセム系言語に特徴的な有声咽頭摩擦音を表していた文字ですので、語源的にこちらの文字が好まれる場合もあります。
ዘ 行の文字
ローマ字のHのような字ですね。アムハラ語を集中的にやっていると英語のHが「ざ」に見えてくることが、冗談ではなくあります。私はピアノを弾くのですが、YAMAHAという文字列を見て「ヤマザ・・・?」と思ったことが何度かあります。本当です。
ዠ 行の文字
ዘ の文字の上に飾りを付けたようなもので、口蓋化したዘと考えてよいでしょう。第6列は注意です。
練習
(1) ǝrswo
「あなたさま」という意味の人称代名詞です。
(2) walä
「昼をすごす」という意味です。
(3) kek bet
kekが「ケーキ」、betが「家」。全体で「ケーキ屋さん」という意味です。
(4) ǝgziabǝher
「神」という意味です。長い単語ですね。ゲエズ語で「地の主」くらいの意味合いです。日常でもよく使います。(追記:すみません!gの文字は未習でした!後日差替える可能性があります。)
(5) wäba
「マラリア」という意味です。なるべく使わないようにしたい語ですね。首都アジスアベバは標高約2400mと高地にあるため、マラリアの心配はほぼありません。しかし、首都から比較的近い場所でもマラリアに罹るリスクのあるところがあります。温暖化の影響でしょうか、マラリア原虫の媒介となるハマダラカがどんどん上ってきているようです。目安としては、2000mを下回った場合、罹患のリスクがかなり高くなると考えてよいのではないかと思います。(医学的な情報については責任を持ちません。)