行の文字

縦に3本線の通った形です。放出音で難しいかもしれませんが、どれも頻用ですのでしっかり覚えましょう。母音の操作はそれほど苦にはならないでしょう。

行の文字

行の文字の下にマルを付けた形をしています。第1列の はなんだか楽譜の3連符に似ていますね。第5列には注意が必要です。

行の文字

下で説明するጸ 行の文字の上に短い縦棒の加えた形です。行の文字は何となく人間、ことに赤ちゃんがハイハイをしているように見えなくもないですから、赤ちゃんにチョンマゲが生えたような形でしょうか。私は初めてこの文字を覚えたときはそのようなイメージでした。ただ、この行の文字の使用頻度はそこまで高くはありません。古い時代に入ったギリシア語の/p/を書き表すための文字です。また、ほとんどの場合重子音として現れます。

行の文字

上で述べたように、赤ちゃんがハイハイをしているような形に見えるのは私だけでしょうか。「エチオピア文字は踊っているみたい」ということをしばしば耳にしますが、おそらくはこの文字形が原因だと思っています。

ፀ 行の文字

漢字の「日」のような形をしています。表す音は 行の文字と全く同じです。書く時もどちらを使っても構いません。印象としてはጸ の文字で書かれることが多いような気がします。で書いた方が語源的に正確だ、ということもありますが。

行の文字

少し変わった形をしています。行の文字に少し手を加えた感じでしょうか。第2列と第4列が ፉ ፋ とよく似ています。第2列 は左側にしっかり捻るようにしましょう。

行の文字

第4列と第7列 ፓ ፖ は大変形が似ています。また手書きでは見分けがつかない場合もあります。困ったことに ፓስታ「パスタ」ፖስታ「郵便」というややこしい単語があります。 これは文脈により判断するより仕方ないような気もします。この文字は比較的新しい外国語(英語、フランス語、イタリア語など)からの外来語に出てきます。

行の文字

の文字の上に空間をあけて横棒を引っ張った形です。/v/の音を表します。 /f/ ではなくበ /b/ の文字を改変するのは、[b]と[v]は似ている、という意識からでしょうか。この二つの混同はなにも日本人に限ったことではないのだな、と素朴に感じます。

練習

(1)polis
「警察」という意味です。新しい外来語ですが、近代化する前は治安維持をするための組織のことを何と言っていたか、気になるところです。

(2)mäs’haf
「本」という意味です。

(3)s’ähay
「太陽」という意味です。この語は普通ጸሃይよりもፀሃይと書く方が好まれる傾向にあります。ちょうど日本語の「日」に対応するのでなんとなく覚えやすいのではないでしょうか。

(4)t’ot’a
小型のサルです。都市部ではあまり見かけませんが、少し田舎に行くと、木から木へ飛び移っていくのをよく目にします。生物学的にどういう種類のサルなのかはよく分かりません。

(5)c’at
「カート」という植物です。エチオピア関係者の間ではアムハラ語にならって「チャット」ということが多いです。私が初めてエチオピアに行ったとき、ガイドブックにchatと書いてあったので、「おしゃべり」のことかなと思いましたが、違います。覚醒作用のある植物で、エチオピアで多く栽培されています。まず落ち着いた時間を確保し、お香を焚きます。そしてチャットの若葉を軽く噛み、頬の中でそのエキスを抽出し飲み込みます。するとフワフワしたような何とも言えない心地になります。私の感覚ですが、タバコやお酒が美味しくなり、様々アイデアが浮かんできます。決して違法なものではないのですが、エチオピア人の中でもこれを敬遠する人は多くいます。中級以上のホテルではチャットを噛むのだけでなく、持ち込み禁止のところも多く、違反したら出入り禁止になるとかならないとか。依存性はそこまで強くはないので、短期間の滞在であれば試してみるのもよいかもしれません。