エチオピア文字は、ここの文字表に挙げたものが合計で277文字あります。これ以外に使う文字はまずないでしょう(たまに北部の都市を表記する際にティグリーニャ語で使う文字を見かける程度です)。277という数は、確かに英語やフランス語などと言った言語の文字からすると多いかもしれません。しかし、比較する対象が適切でないかもしれませんが、日本語は漢字を含めると2000以上ですし、中国語はそれ以上。277は決して多いとは言えないと思います。

そのうえ、エチオピア文字はある程度の規則性があるので、主要なものはすぐに覚えられると思います。管理人が学生時代学習を始めた時は、夕方図書館で2時間くらいやっていましたが、文字の問題は3日ほどでおおよそ解決しました。臆することなく気楽にやっていきましょう。忘れたら戻ればよいですしね。

子音と母音の音節文字

さて、エチオピア文字は基本的に1文字が

子音+母音

を表しています。日本語の仮名のような文字です。「か」という文字は1つで”k”という子音と”a”という母音を同時に表していますよね。同様にエチオピア文字で

という文字は一文字で”k”と”a”を表しています。なんとなく、仮名のような性格を持っていることがお分かりいただけましたか?

基本の文字と母音の操作

下の表をご覧ください。

一見して分かるように、母音の列と子音の行のマトリックスになっています。例えば/bi/の文字は、bの列とiの行の交差しているところ、すなわち

であることが分かります。

今度は一つの子音に注目して母音が変わるとどうなるか、すなわち表をヨコに見てみましょう。すると母音が変わっても何となく文字の形が似ていることに気づくのではないでしょうか。これは一番左側の文字(すなわちäを表す文字)が基本となって、それに何らかの変形を加えることによって母音が違うことを示しているのです。

次にそれぞれの母音に注目、すなわち表をタテに見てみましょう。するとなんとなく、基本の文字の変形の仕方が似ていることに気づかれるのではないでしょうか。例えば、uの母音の時は文字の右側に棒を、iの時は右側の下に棒などです。

全ての文字がこのように簡単に説明できるとは限りませんが、このような基本的なシステムを覚えておくことによって、文字の学習に関する困難が大きく軽減されると思います。

重子音記号について

アムハラ語には「重子音」というものがあり、意味の区別をするうえでとても大切です。重子音とは、同じ子音を2つ重ねることで、ざっくりと「日本語の小さい『っ』」と思っていただいて構いません。しかし、エチオピア文字ではこれらを書き表す方法はありません。このサイトでは便宜的に文字の上に2つの点を置くことによってその文字の子音が重子音であることを表すことにします。ただし、エチオピアではこの記号は使いませんから、結局のところ単語や動詞の活用を覚える際に記憶するしかありません。

練習

では、練習として、以下の文字を読んでみましょう。

では答え合わせです。

(1)koka kola です。意味はそのまま「コカコーラ」ですね。

(2)はboleです。エチオピアの玄関口「ボレ国際空港」のある地域です。

(3)はbal。「夫、だんな」という意味です。の文字はlǝではないのか、と思われた方がいらっしゃると思います。実は、6番目の文字はǝの母音を表す場合と、子音のみを表す場合があります。どちらになるかは単語によって、あるいは音節構造によって決まります。この問題は学習を進めていけば自然と分かってくるものですので、今はそこまで気にすることはないでしょう。後のセクションで詳しく説明します。

(4)lebaです。これは問題ないですね。「泥棒」という意味です。

(5)kokkäbと読みます。2つ目の文字の上に重子音記号がありますから、*kokäbではなく、kokkäbとなります。重子音については別の課で詳しく見ていきます。

以上が基本的な文字の仕組みです。以降のセクションではそれぞれの文字を詳しく見ていきます。数の多さに臆することなく、着実にやっていきましょう。