さて、それぞれの文字を見ていきましょう。
ሀ 行の文字
記念すべき1文字目ですが・・・、実はこの文字は例外があります。
第1列の文字の母音が/a/となっています。誤植ではありません。普通の1列の文字は/ä/の母音が付くのですが、/h/の子音に続いた時は基本的に/ha/となります。これは歴史的な音変化の結果なのですが、ここでは深入りはしません。ここでは以下のことを覚えてください。
◆hの子音に続いた第1列の文字は/ha/になる(例外は1つ)
◆母音のみの文字の第1列の文字は/a/になる(例外は1つ)
いきなり変則的なもので申し訳ありませんが、順番上仕方のないことですのでご容赦ください。
第6列の文字は不規則的です。この文字の場合は左上をひっかけるようなイメージですね。
ለ 行の文字
この文字の母音操作はわりと典型的なものです。第7列 ሎ は少し特殊です。先述のとおり、第6列の文字は独特なのでしっかり覚えましょう。
ሐ 行の文字
熊手のような形をしていますね。この文字も/h/を表しますから、第1列の文字は/ha/となります。さて、/h/を表す文字が2つ出てきました。これは昔は違う音を表していたのですが、アムハラ語ではその音の違いが無くなってしまいました。しかし文字の削除はされず、今では複数の文字が共存し、同じ音を表すことになっています。/h/を表す文字は全部で4種類あります。語源的には色々あるのですが、基本的にどれを使っても構いません。
መ 行の文字
メガネのような形をしています。メガネの「メ」と覚えてしまいましょう。基本的な母音の操作は他の文字と似ていますが、第7列の ሞ は少し例外的と言えるかもしれません。まただ6列はやはり不規則です。ም と ሞ はよく似ているので間違えないようにしてください。
ሠ 行の文字
/s/を表す文字です。実は/s/にも2種類の文字があります。この文字は ሰ です。個人的な感覚ですが、この ሠ の文字は使用頻度が低いように思われます。それでも、どちらを書いても分かってもらえますのでご安心を。
ረ 行の文字
少し基本の文字の形が今までとは違います。ですので、母音の操作も少し変則的なところがありますね。第2列/u/の時は右側に棒を書くものが多かったですが、この行の文字は右側に線がありませんので、棒を付けることが出来ません。したがって(なのかどうかは分かりませんが)ሩ のように下に棒を書きます。その他の文字も母音の操作が今までのものとは少し違っているので、注意して覚えましょう。
練習
(1)hullu
「すべて」という意味です。重子音に注意しましょう。
(2)lela
「別の」という意味です。
(3)mulu
「完全な」という意味で、男性の名前でもあります。
(4)sǝra
「仕事」という意味です。/sra/という風に読んでも差支えはないでしょう。
(5)hamle
エチオピア暦11番目の「ハムレ月」です。西洋の太陽暦だとおおよそ7月初旬から8月初旬に当たります。
(6)lomi
「レモン」という意味です。エチオピアのレモンは皮が青く、みかんよりも小ぶりです。肉やジュースなど、各種飲食物の付け合わせとしてよく目にします。